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プロレス名勝負一日一話

田村 潔司 vs. ヘンゾ・グレイシー(2000.2.26)

2000年(平成12年)2月26日 日本武道館

▽WORLD MEGA BATTLE TOURNAMENT "KING OF KINGS" 二回戦

 5分2ラウンド

 田村 潔司 vs. ヘンゾ・グレイシー


◼️名勝負は手元に置いておきたい


 小学生、中学生のころの夢は、日本国内で放送されたプロレス番組の映像を全てビデオで集めること、でした。中学一年生の冬にビデオデッキを買ってもらってから、新日本プロレス中継は全て録画、全日本プロレスはビッグマッチのみだけど録画を続けていました。


 とにかく過去の名勝負は手元に置いておきたい。2020年の現在は新日本プロレスワールド、WWE NETWORKなどで過去の試合がストリーミング配信されています。それでもやっぱり未公開の名勝負はまだまだたくさんありますね。


 だから僕は過去に録画したビデオテープ、DVDをいまだに手元に置いています。ストリーミング配信ではお目にかかれない試合でも、多少の画質に目をつぶれば満足して楽しむことができます。


田村 潔司 vs. ヘンゾ・グレイシー(2000.2.26)_a0117922_09232583.jpg


 そんな僕でも20年間、いつか見たいと思いながらその機会がなかった試合が今日ご紹介する田村潔司とヘンゾ・グレイシーの一戦でした。


 この試合はリングス10周年記念DVDにのみ収録されています。すでに廃盤になっているのか、市場に出ているのは中古で定価かそれ以上のものだったので、なかなか購入する機会がありませんでした。でもようやく、適正価格でAmazon経由で購入できました。

 

◼️この試合の背景


 2000年2月26日、日本武道館で行われたその日の夜、サムライTVでのプロレスニュースを見ていると、結果速報をキャスターの大江慎さんと工藤めぐみさんが伝えてくれました。


 なんと田村潔司が判定ながらヘンゾを下した!


 そして何より今も印象に残っているのは、田村潔司が入場曲に「UWFのテーマ」を使用して入ってきた!ということでした。


 実際に会場に足を運んだわけでも、映像で見たわけでもないのですが、このことを知って一瞬にしてぐわーっと熱くなった思い出があります。


 1997年、1998年に高田延彦がヒクソンに敗れ、2000年1月にはホイスにも敗れ、UWFとUWFインターという本物、最強が消えつつあった頃です。


 1995年のUインターと新日本プロレス対抗戦開戦を機にUWFを離れた田村潔司。闘いの場を前田日明率いるリングスに移した田村はその後、前田の後にリングスの日本人エースとなっていました。


 そんな中、ヘンゾ・グレイシーがリングスに参戦。1999年に坂田亘、モーリス・スミスをともに試合時間1分前後で簡単に下していました。


 そして開催された WORLD MEGA BATTLE OPEN TOURNAMENT、この準々決勝で田村とヘンゾが戦うことになったのです。この時はまだ日本マット界とファンの間では「グレイシー」への恐れが大きくありました。グレイシーと交わった選手、団体はその強さを疑われることになり、徐々に求心力を失っていました。


田村 潔司 vs. ヘンゾ・グレイシー(2000.2.26)_a0117922_09333221.jpg


 田村潔司も、リングスも、ここまで築いてきたもの、つまりファンの心にある信頼のようなものを失ってしまうのではないか、という危惧がありました。一方、だからこそ、この試合への期待度、注目度は最高潮だったのでしょう。


◼️入場テーマ曲の力


 そこで入場曲に使用したのが「UWFのテーマ」。


 このイントロが流れた瞬間、超満員の日本武道館のどよめきと、その直後から続く大歓声、大タムラコールは想像にかたくありません。


 この曲を使うということは、Uを背負う、Uの歴史に全て責任を持つ、という覚悟をファンは感じます。同時に、私たちが1984年の第一次UWFからここまで16年間、紆余曲折ありながらも見続けてきた歴史、自分の来し方を思い起こし、それが正しかったんだと証明するのか、否定されるのか、を田村の入場に重ね合わせて見ていたことでしょう。


 Uの遺伝子は私たちの中にも眠っていたのです。


 だからこそ、この日のサムライニュースでの速報には衝撃と感動を受けたのです。


 試合後の田村のコメントに、「第1ラウンド序盤に首を取られた時、ギブアップしそうになったけれど、観衆の声を聞いたらもう少し頑張ってみようと思った」という感じのものがありました。


 観衆の声を引き出したのは、きっとUのテーマと、そこから呼び覚まされた観衆の中に眠っていたUの遺伝子だったのでしょう。


 僕の中で伝説となっていたこの試合、いつか見たいと切に思っていました。そしてようやくDVDを入手し、この試合を見ることができたのです。


 20年を経て目にしたこの試合、入場シーンは残念ながらカットされていますが、試合内容はさすがのものだと思いました。5分2ラウンドという短い時間制限の中、勝敗は判定に委ねられます。


田村 潔司 vs. ヘンゾ・グレイシー(2000.2.26)_a0117922_09372709.jpg


 今見てみると、あっさりしている感もありますが、それはUのテーマで爆発する武道館をみることができなかったからかもしれません。それでもようやくみることができたこの試合。ありがとうございました。



by meishoubu | 2020-05-05 09:38 | 2000年(平成12年)
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陽の目を見ない試合でも語り継がれるべきだ。プロレスというものありき…。プロレスを後世に残そう。
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