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プロレス名勝負一日一話

アントニオ猪木全集 012 タイガー・ジェット・シン戦

 アントニオ猪木が引退した1998年から6年がたった2004年に発売された猪木名勝負全集DVDセット。発売直後に購入したものの、ほとんど観ずに17年ほど経過した。私も50歳になり、これから猪木の試合を全て見返すことはなかなかできないかもしれず、これを機にこの全集DVDに収録されている試合を一日一試合観ていき、感想メモを残していきたい。

アントニオ猪木全集 試合No.12

昭和49年6月20日 蔵前国技館

▽NWF世界ヘビー級選手権

 アントニオ猪木 vs. タイガー・ジェット・シン



 猪木シン戦といえば大阪での腕折りの試合が有名、代表的と言われる。その伏線となったのがこの試合でした。


 前年の暮れにジョニー・パワーズを破りNWF王座を勝ち取った猪木。今やNWFといえばアントニオ猪木のものでしたが、この頃はアメリカにあるNWF本部からの視点では日本に流出してしまったタイトルという位置付けでも語られていたようです。意外ですね。


 そのアメリカにあったNWF本部が猪木からタイトルを奪還すべく挑戦者に指名したのがタイガー・ジェット・シンでした。シンは前年から新日本プロレスに登場して猪木と死闘を繰り広げてきたようで、その盛り上がった一つの頂点としてこの試合と翌週に組まれている大阪の試合という設定だったようです。

 

 猪木とシンの試合の印象は、以前の私にとってはシンの狂乱さのおかげで入場から試合まで時間がかかるし、執拗なシンのクロー攻撃ばかりで少し退屈だなぁというものが少しあったのも正直なところです。


 ところが今回、改めて見ると、全てにおいて「間(ま)」が素晴らしく、一つ一つの技、技の連携が素晴らしいと感じました。やっぱりシンは相当のテクニシャンだったのだなぁとわかる試合です。

 

 三本勝負のこの試合、一本目は猪木が卍固めでシンを捉えて先取。そして二本目に入るところ、卍固めのダメージが抜けないのか、シンがコーナーにしゃがみこんで出てこない。業を煮やした猪木が詰め寄るも、レフェリーのミスター高橋がはやる猪木を制しながらシンをリング中央に出てくるように促す。猪木はそれでも我慢できずシンに歩みを進めたところでシンがタイツから何やら出して、そこから火、火の玉がボッと猪木めがけて飛び出した。


 一瞬シーンとなる会場。そのあとの「何が起きたんだ」というざわめき。目を押さえて開けることができない猪木の表情。シンの反則負けを告げるゴングが鳴り、あっけなく猪木が二本連取でタイトル防衛となるも、混乱は続き、ファンも驚きのあまりその場を去ることができない。


 現代のプロレスならここで終わると物足りなさが残りブーイングの雨あられになるところだ。当時のプロレスファン、観客は全てを楽しんでいた。全てに一喜一憂、喜怒哀楽を感じてそれをリング上のレスラーに投げかけ、そしてレスラーと共有していた。


 シンの入場時からシンに怒り、シンを恐れ、猪木に声援を送り、猪木と痛みを分かち合っていた。そんなことに気づくこの試合。


 この試合の結末が六日後の大阪府立体育会館での腕折り事件に繋がっていくのだった。


 最後までお読みいただき、ありがとうございます。


(DISC-7)



by meishoubu | 2021-10-31 10:45 | アントニオ猪木全集
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陽の目を見ない試合でも語り継がれるべきだ。プロレスというものありき…。プロレスを後世に残そう。

by meishoubu
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