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プロレス名勝負一日一話

勝敗を超越したふたり 〜2022.12.29 スターダム 両国国技館〜

2022年12月29日 両国国技館
スターダム DREAM QUEENDOM 2022

JRで新宿から両国へ向かう。御茶ノ水駅での総武線への乗り換えで運よく座ることができたので、沢木耕太郎さんの「春に散る」の最終章を読んでいた。いつの間にか両国駅を乗り過ごし、亀戸駅まで行ってしまった。夢中になると乗り過ごすことが時々ある。幸せなことだ、そんな本に出会えるなんて。

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 両国駅に戻り、到着したのは16時20分過ぎだ。ちょうど第0試合が始まった頃だ。駅近くのファミマでお茶とパンを買っていく。新日本プロレスの両国大会のような、会場へ向かうファンの行列、ごった返しはない。まだまだこれからだ。

 今日の座席は2階席正面6列12番。リングから遠くて見えづらいかなと思っていたけれど、意外と近く感じた。もしかするとリングの位置をこちら側に寄せていたのかもしれない。向正面側の2階席はクローズしていたので、あえてアリーナ中央にリングを置く必要もないからだ。

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いくつかの試合、何人かの選手が印象に残った。

◆第3試合、白川未奈、ウナギ・サヤカのタッグ
 
 白川の顔面骨折からの復帰戦。白川の表情が凛々しくなっているのに瞠目した。そしてスターダムを離れたウナギにも目がいった。背が高くて華がある選手だと感じた。スターダムを生観戦するのは実質初めてなので、この二人がもともと同じユニット、タッグチームだったとは知らなかった。なぜ知ったかというと、試合後に白川がウナギとの共闘を今日で終わりにすると表明したからだ。追放された形になったウナギの呆然自失の様子とその後に崩れるように泣きながら去っていく姿が胸を突いた。

◆第5試合 KAIRI vs. 林下詩美
 
 この試合が決定したから僕はチケットを買ったのだ。そのくらい惹きつけられる対戦カード。スターダム観戦は実質初めてだと書いたが、2015年9月に後楽園ホールで一度観戦したことがある。その時はまだまだ拙く、観戦に堪え得る内容ではなかった。その後、親会社がブシロードになり、新日本プロレスと兄妹団体になってからの選手層の厚さ、選手のレベルの高さ、試合内容、ストーリー展開、演出は別次元の素晴らしさになったのが今のスターダムである。だから、実質の初観戦なのだ。

 その2015年9月の大会で、当時、宝城カイリだったKAIRIが5★STARグランプリで優勝したのを観たのだ。その後、WWEに移籍し KAIRI SANE(カイリ セイン)として活躍。今年2022年3月にスターダムに復帰参戦。

 一方の林下詩美は新日本プロ的にいうと、ストロングスタイルの申し子的存在。レスリング技術、体格が優れていて、スターダムの至宝のベルトを腰に巻いたこともある。だが、まだまだ実力を発揮しきれていないもどかしさをどこか感じさせるレスラーだ。まだまだ突き抜けられるだろう!ともどかしい部分もある。

 キラキラのKAIRIと内省的な詩美。好対照の二人が対戦するワクワク感が僕を会場まで連れてきたのだ。

 試合は15分一本勝負なので、時間切れ引き分けという結果だけ見ると予想通りだった。だけどラスト3分間の攻防、詩美のラストライド炸裂をしのいだKAIRIがコーナー最上段からのインセインエルボーを決めてフォールにいくところでタイムアップという展開は2023年の二人のストーリーの予告編となった。これも素晴らしい試合だった。

 試合前、試合後にKAIRIが詩美へ「青い薔薇」を差し出す謎かけをした。青い薔薇は、不可能なものはない、常識に囚われない、という象徴でもある。2023年の詩美に注目したい。

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◆第8試合(セミファイナル)
 ワンダー・オブ・スターダム選手権 上谷沙弥 vs. 梅咲遥


 一見、キレイ系の上谷。でも試合の運び方は天然さがあって、どこかファンが慣れている試合のリズムとずれるところがある。だがこれは予定調和という退屈さに陥らない良さがある。不器用な選手かもしれないが、ここまでファンから支持されているのは、天然さを出すことへのためらいがなく、自分をさらけ出して思いっきりのびのびファイトしている姿があるからだろう。

 白川未奈を怪我させてしまったトラウマを払拭し、真に解放された上谷沙弥になるために、これからの防衛ロードと来るべき白川とのリマッチを楽しみに見守っていきたい。

◆第9試合(メインイベント)
 ワールド・オブ・スターダム選手権 朱里 vs. ジュリア


 二人の関係の歴史をマニアほど知っているわけでないので、思い入れはそこまでなかった。ただ、これも超ストロングスタイルの朱里を応援したく期待した試合だ。

 序盤はどこか散漫な印象の試合展開だったけれど、30分一本勝負の15分過ぎから二人の攻防が入魂という言葉が相応しいものになっていった。

 気づくと、このまま二人とも負けないでくれ!大技を食らっても返してくれ!という気持ちになっていた。二人とも、よくぞここまで相手の技を受け切った!というものだ。そんな大技、すごい技を食いながら、なぜ返すことができるんだ!そこには二人にしかわからない気持ちの交差があったのだろう。

 朱里とジュリア、二人が作った二人の世界。それを目の当たりにして、試合後はただただ両者に惜しみない拍手を全力で送り続けることしかできなかった。

 決着はついた。でも二人とも勝者だった。

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◆振り返ってみて

 スターダム12・29両国大会を見ていて感じたことは、このままいくと、近い将来、女子プロレスは新日本プロレスを食ってしまうくらいの存在になるということだった。

 なぜそう感じたのか?今のプロレスは、プロレスゲームで再現される動きになっているのだ。どちらかというと、戦いというよりはゲーム性が強くなっている気がする。男子も女子も出す技が似てきて、展開も似てきている。

 昭和、平成初期のプロレスには、予測不能というか、その頃の試合をテレビゲームで再現しろと言われてもおそらくできないだろう。ゲームでは再現できない動き、そのベースとなっているレスラーの感性が違ってきているのだ。

 新日本プロレスが今のゲームで再現できる試合展開を続けるのなら、そこに女子プロレスとの違いは見出しにくくなるだろう。そういう時、僕だったら、やっぱり女子に走ると思う。

 こういう言い方は古いかもしれないけれど、男のプロレスにしか出せない何かを追求していって欲しいなと思う。

 女子プロレス観戦をしながら最後は新日本プロレス愛に満ちたまとめになってしまった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

by meishoubu | 2022-12-30 23:11 | 2022年(令和4年)
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陽の目を見ない試合でも語り継がれるべきだ。プロレスというものありき…。プロレスを後世に残そう。
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